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鴨川の鳥たち(又)

 今、鴨川(私の散歩範囲の三条から塩小路の間)では、ヒドリガモが最も多く、次いでオナガガモの順になると思う。そして、冬の間にコガモが増えて、特に五条から川下では 10 羽、 20 羽と群れを作っている。

 暖かくなって、アオサギは移動が多くなった。えさをやっていた2羽のうち、若手の方は顔を出さなくなった。ある日、えさやりに行く途中で、多分そのアオサギだと思うが、五条の橋をこえて夕闇の空を南に飛ぶ姿を見かけた。嘴が赤くなっているから、繁殖期に入ったのかもしれない。

 前回書いたように、アオサギは人からえさをもらう。そして、その人をやはり識別している。パンを買うため、堤防の上の歩道を歩いていると、対岸からこちら側の遊歩道に飛んで来る。この間 30 mはある。時には、歩道近くまで追って来る。但し空腹でないときには、合図しても知らぬ顔をしているし、えさをやっている最中でも、お腹が一杯になると、例の声で挨拶して帰る。

 白鷺は人に寄らない。ダイサギもコサギも、人からえさをもらうことがない。アオサギが 1 日中ぼんやりしているのと異なり、よく漁の態勢をとっているし、小魚を拾っている。



 セキレイが2羽 1 組で追いかけっこをしているのを見掛けるようになった。その鳴き方はこれまでと違って、激しく感じる。小鳥では、セキレイ以外に、ツグミが遊歩道によく現れる。翼が茶褐色で鮮やかな以外地味な鳥だが、ホッピングしては胸を張るのが可愛い。ツグミは1羽で出てくるのに対して、ムクドリは5、6羽で鴨の群れに混じって、えさを採っている。朝方鴨にえさを撒いていると、近くまで寄って来たりする。メジロは天気の良い日に桜の樹に群れて、大回転などを披露してくれるときは、騒々しくさえずっているが、雨の日など1羽でチーチーと鳴く声はまことに物悲しい。松原橋には巣を作っているのだろうか、カワセミが不意に落ちてきて、川水に浸かり、そのまま川面すれすれに四条方面へ飛んでいくのを2回目撃した。











 鴨類は相変わらず、土を掘り返したり、川面を掬ったり、川に沈んだ草の茎をちぎったりと、えさ採りに精を出している。雪が積もったときも、その土をほじくっていたし、氷雨の日も上半身を水に漬けて、川底を漁っていた。

 ヒドリガモは人に慣れてきたのか、えさをくれそうな人間には近付いて来るようになってきたし、コガモは依然人を避けているが、岸辺近くでえさ採りをしている。

 繁殖期に入っているようで、朝方にコガモ、オナガガモの交尾を、マガモのは午後に目撃した。昨日の朝も、コガモが雌を囲んで、ディスプレーをしていた。今はどうか知らないが、昔体育の先生がよく持っていた呼び笛を軽く吹いたような声―ヒュヒュと表すのが一番近いだろう―と豚や牛が鳴くのに似た声―ブェブェだろうか―を出しながら、胸をのけぞらし、尾羽を高く上げる。そして、羽ばたきをする。中には苛ついているのか、飛び上がって雌に寄ろうとするのもいる。これを雄6羽でやっていた。雌の方は鳴いたりしないようだし、ストレッチ運動もしない。

 いざことに移るとき、雄は雌のお尻から背中に乗り上げる。重心を雌に移すと同時に、嘴で雌の首を押し下げながら、全身を相方の背中に載せる。雌の身体はほとんど見えなくなるくらい水に沈む。この間の具体的な行為は不明だが、5秒ほどで雄は下りる。他の鴨の所要時間もそれくらいか、もう少し短い。雄がどいた後、雌は羽ばたきをして、水を払う。

 オナガガモを観察したときには、両者首を上下しながら群れを離れていた。マガモでは番いは2組いたのだが、1組だけがことを行い、もう1組は雄は昼寝、雌はえさ採りをしていた。そして、雌が羽ばたきした後、雄が2度目を試みようとしたけど、逃げられていた。













 ユリカモメは帰った。おそらく最後のユリカモメだろう、今朝、仲間がいなくなった川面を往復して、時々魚を見つけては、ダイビングして小魚を捕まえていた。 10 m以上離れたところから、獲物を嘴に挟んでいるのが見えたのは初めてだ。あるいは、2月に翼を外して五条大橋にうろうろしていたカモメかと思ったけど、見たところ翼の動かし方は正常だった。もしそのカモメであれば嬉しいかぎりだ。

 その翼を故障したユリカモメを初めて見たのは、まだ雪が降ったり止んだりしている頃で、橋の下に独り佇んで、辺りに目を配っていた。右の翼がずり落ちているのが明らかで、歩くときは片方の翼を引きずるため、何か落ち武者を連想させた。鳶か烏に襲われたのか、それとも仲間内で衝突があったのか、あるいはわたしには想像できない事故に遭ったのか。

 それから、散歩の途中時々見かけた。ある時は橋の下で岩に立っていたし、ある時は岸で日に当たっていた。治療のつもりなのか、よく右翼の付け根辺りを嘴で触っていた。見かけない時、どこにいるんだろうと辺りを探しても、鳥影はない。数週間経った頃だと思うが、ある小母さんがそのユリカモメを覗き込んで「怪我をしてるわ」と言いながら、パンか何かを与えていた。

 見たところ、依然として様子に変化はなく、翼はずれたままだ。ただ、この時は飛んで逃げるのを見ることができた。右の翼が十分持ち上がっていない。わたしもそれから、持ち合わせのある時はパン切れを与え、夕方の鴨達へのえさやりの時、このユリカモメも参加するようになった。

 鳶が襲来する危険の無くなった頃、鴨達の一部は岸に上がって来る。そのユリカモメも岸でえさを拾った。鴨の外側で待っていたり、群れに混じってえさ争いをした。さすがに集団の時のように鴨の頭を突いてえさを奪うことはなかった。慣れてくると、橋詰の階段の下で待っているようになった。

 先に、そのカモメにパンを投げたところ、やはり待ち構えていたアオサギに取られたので、次からは、アオサギがパンを呑み込むのに苦心している間に小さめのパン切れを与えた。鷺に対する遠慮は大したものだが、空腹の時は1口で食べて、すぐ次を要求する。油断していると、サギが食べ終わっていて、ユリカモメを襲い横取りすると言うか、ユリカモメの方でさっさと飛んで逃げる。

 そのえさ貰いに2週間ほど参加しただろうか、ある時から全く来なくなり、朝の散歩で、1度見かけた。ヒドリガモが岸に上がり、草を食べている傍に立っていた。翼のずれはやはりある。わたしが鴨にパンをやっている時近付いてきた時の写真が左のものだ。飛び去る時、右の翼の上げ方が足りないと思ったけど、それと気を付けていないと分からない程度だった。



 北山にまだ雪は残っているけど、葦の白い株は川中に浮いているけど、浅瀬を流れる川は陽炎に似た影を作り、足元には紫の小さな花が固まっている。

 ユリカモメが去り、近いうちに鴨類も北に帰るだろう。あのカラフルな鳥達が賑わした冬の川の景色をもうしばらく楽しみたい。

   注)ユリカモメの最終目撃は3月29日
   
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