ユリカモメは帰った。おそらく最後のユリカモメだろう、今朝、仲間がいなくなった川面を往復して、時々魚を見つけては、ダイビングして小魚を捕まえていた。 10 m以上離れたところから、獲物を嘴に挟んでいるのが見えたのは初めてだ。あるいは、2月に翼を外して五条大橋にうろうろしていたカモメかと思ったけど、見たところ翼の動かし方は正常だった。もしそのカモメであれば嬉しいかぎりだ。
その翼を故障したユリカモメを初めて見たのは、まだ雪が降ったり止んだりしている頃で、橋の下に独り佇んで、辺りに目を配っていた。右の翼がずり落ちているのが明らかで、歩くときは片方の翼を引きずるため、何か落ち武者を連想させた。鳶か烏に襲われたのか、それとも仲間内で衝突があったのか、あるいはわたしには想像できない事故に遭ったのか。
それから、散歩の途中時々見かけた。ある時は橋の下で岩に立っていたし、ある時は岸で日に当たっていた。治療のつもりなのか、よく右翼の付け根辺りを嘴で触っていた。見かけない時、どこにいるんだろうと辺りを探しても、鳥影はない。数週間経った頃だと思うが、ある小母さんがそのユリカモメを覗き込んで「怪我をしてるわ」と言いながら、パンか何かを与えていた。
見たところ、依然として様子に変化はなく、翼はずれたままだ。ただ、この時は飛んで逃げるのを見ることができた。右の翼が十分持ち上がっていない。わたしもそれから、持ち合わせのある時はパン切れを与え、夕方の鴨達へのえさやりの時、このユリカモメも参加するようになった。
鳶が襲来する危険の無くなった頃、鴨達の一部は岸に上がって来る。そのユリカモメも岸でえさを拾った。鴨の外側で待っていたり、群れに混じってえさ争いをした。さすがに集団の時のように鴨の頭を突いてえさを奪うことはなかった。慣れてくると、橋詰の階段の下で待っているようになった。
先に、そのカモメにパンを投げたところ、やはり待ち構えていたアオサギに取られたので、次からは、アオサギがパンを呑み込むのに苦心している間に小さめのパン切れを与えた。鷺に対する遠慮は大したものだが、空腹の時は1口で食べて、すぐ次を要求する。油断していると、サギが食べ終わっていて、ユリカモメを襲い横取りすると言うか、ユリカモメの方でさっさと飛んで逃げる。
そのえさ貰いに2週間ほど参加しただろうか、ある時から全く来なくなり、朝の散歩で、1度見かけた。ヒドリガモが岸に上がり、草を食べている傍に立っていた。翼のずれはやはりある。わたしが鴨にパンをやっている時近付いてきた時の写真が左のものだ。飛び去る時、右の翼の上げ方が足りないと思ったけど、それと気を付けていないと分からない程度だった。 |