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 以下は、以前参加することのできたNPMについての講演(2000年5月)内容を整理したものです。多少長文になり、読む方には気の毒ですが、これによってNPMの理論とその適用についての課題を理解していただけましたらと思います。

序章
  資本主義ができたときは、市場のパワー−経済的には価格機構とか市場機構と言う−マーケットがいろんなことを決める。それが資本主義本来のメカニズムです。ですから今のところ資本主義国と言われている日本やアメリカ、ヨーロッパの国々は、原則的にこのマーケットの力を経済の運行の基礎としてきたわけです。ところが、市場の失敗−何でもマーケットでやらすとなると、当然ながらいろんなことが上手く行かない。市場の失敗の一番の例が公共財の供給を市場でやらすと十分な供給ができない(過小供給)、もう一つ大きな問題は、所得分配が上手く行かないというあたりです。所得分配の問題について、もう少し補足しますと、資本主義では能力のある人はいくらでも稼げる−能力があるというのはマーケットで売れるという基準−ということになりますと、稼げる人はいくらでも稼げる、稼げない人はあんまり稼げないという厳しい社会になります。おそらく、日本も今後、そちらの方向に向かって行かざるを得ないのではないかと、私は思っています。話を戻しますが、そういうようなマーケットではできないことがあり、これを通常、市場の失敗と呼んでいます。
  それで、資本主義的なメカニズムを基本としながらも、そこに政府(国も地方も)が介入して、マーケットでできないことをやろうという混合経済体制を、今までずっとやってきたわけです。第2次世界大戦後、この方向が強まりまして、資本主義経済ではあるけれど、例えば日本では資本主義経済的でない部分がかなり多い部分を占めるというふうになっています。経済企画庁が随分前に出した本で、日本で規制がらみの分野が日本の生産総額の半分近くでそうだというようなことが書かれていて、もはや純粋の資本主義社会ではないということになります。
  それはえらく良いことのように思われますが、どうも市場が失敗したのと同じように、政府も失敗したと言っていいんじゃないかということが、10年以上前から世界的に言われ出しました。失敗の原因はおそらくいろいろあると思います。政治家の介入だとか、官僚制とかが挙げられますけれど、少なくともはっきりしていることはマーケットに任せずに、政府が介入したことによって、どの国も政府部門に莫大な借金を抱えるようになった。そうすると、収支を考えずに行動する結果になってしまうという意味で、失敗したと言わざるを得ないのではないか。具体的な数字は後で述べますが、もう少しマーケットの力を使う方向に変えざるを得ないのではないかと思います。キーワードはやはり市場化だろうと、私は思います。今まで政府部門がやることは、民間と違うのだから、マーケットの力というのはあんまり関係ないんだと思われるかもしれないが、どうもそうではないんだ、政府がやることも可能な限り(全部できるかどうか分からないですが)、マーケットの力を借りるという動きがもう十数年前から起こってきたわけです。これが、NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)が出てきた背景です。

第1章 行財政改革理念及び手法としてのニュー・パブリック・マネジメント(NPM)
1.NPMとは何か−世界的なNPMの動向
 ニュー・パブリック・マネジメントというのは、資本主義国で政府のやり方を大胆に変えていこうという考え方・手法だということなんですが、先にお断りしておかなくてならないことは、皆さんの勤めておられるところでやっておられるやり方と、本日私は話しようとすることは随分違うかもしれません。ニュー・パブリック・マネジメントと申し上げても、多様な側面を持っておりまして、私みたいな経済学者が見ると、経済学的分野もあるし、経営学的分野もあるし、政治的分野もあるし、いろんな分野があります。それから、国によって随分考え方が違います。おそらく皆さんがやっておられる事務事業評価システムは、アメリカのオレゴン州のやっているようなベンチマーキングをやろうというようなところも多いと思いますけれど、私が今日話をしようとするのは、どちらかというとイギリスでスタートした基本的な形でのNPMという話をさせていただきたいと思っています。私の念頭にあるのはイギリス、ニュージーランドです。ですから、同じアングロサクソン系でもアメリカのオレゴン州はまた違うやり方をしています。また、ヨーロッパのドイツ、フランスはまた違う。それから、北欧型はまた違う。随分国によってやり方が違ってきますので、どこの話をしているかでNPMが随分違ってきますのと、それから、これは半分余談なんですが、最近国際的な機関が開発途上国にお金を貸す時、NPMをやらないと貸さないよと前提条件にしていまして、最近途上国型NPMというのがあります。あまりにも多様で一括して話すことができませんので、あらかじめ、私はイギリス、ニュージーランド型の話をするという点で御了解いただきたいと思います。
  イギリス人のマーティン・ミノーグという人がNPMとはこういうものだと定義しています。NPMとはかなり過激な主張であると考えていただいていいかと思います。
  先ず、restructuring of the public sector, particularly through privatizationですから、NPMというのは公的部門のリストラであると、特に民営化を通じてリストラをやるんだということであり、今まで公共がやっていたことを可能な限り民営化して、公共部門をリストラしようというわけです。これは明らかにほかのタイプのNPMとは違うということが言えると思います。
  それから、2番目のrestructuring and slimming down central civil servicesは、大事な部分の市民サービスをリストラして、スリムにするということです。
  3番目は、introducing competition, especially through internal markets and contracting public services to the private sectorで、競争を導入するんだということです。日本に限らずいろんな国で公的部門に競争という概念はあまりないと思うんですけれど、民間と同じように競争を導入するんだということで、考え方が180度転換といっても良いような気がします。どんなふうにやるかというと、内部市場を作ったり、公的サービスをするのも民間部門と契約を結ぶことによってやるんだということです。後段のcontracting public services to the private sectorの部分は、日本語で分かりやすく言えば、今、福祉の部門でそうなりつつありますが、今までは自治体で何らかの措置してきたものを契約に切り替えていこうということで、これは、介護とかいろいろなところで言われていますが、いろんなやり方でやっていこうというわけです。
  4番目はimproving efficiency, especially through performance auditing and measurementと、今まで政府、国とか地方自治体がやることは効率性ということをそれほど考えてこなかったと思うんですが、今後はとにかく効率性を改善しなくてはいけないということです。何でやるかというと、ミノーグは、performance auditing−これは日本ではまだ言われていないと思うんですが、auditingは監査ですけれど、日本の監査というのはお金がちゃんと使われたか、出張に行ったといえば本当にそこに行ったのかということを見るんですが、performance auditing−はそれをやったことによって効果がどれ位あったかということを監査しようというわけですから、お金が有効に使われかどうかをチェックする、それから、measurementですから何らかの方法で測定する。お金の出入りだけでは(間違いなく使われたかというのも大事なんですが)、どれ位有効に使われているか、全く分からない。今そちらの方向に進んでいるということです。
  4点申し上げましたが、かなり日本の地方自治体の現状からすると、過激な主張だと思いますし、このままの形で日本の自治体でできるとは思っておりませんが、世界のNPMの一番過激なところではこういうことが言われているというわけです。
  また、良く最近VFM(Value for Money)ということが言われまして、使うお金の価値を高めようというか、価値ある使い方をしようという言葉なわけです。よく言われますけれど、3Eという言い方もありまして、この両者が全く別物かどうかということは難しいんですけれど、Economyは投入ロスの最小化、Efficiencyはアウトプットの最大化−今まで皆さんがやってこられた仕事で、どれ位金をつぎ込むか、或いは人をつぎ込むか、時間を使うかということで、Efficiencyは、道路であれば何km舗装できたかを最大化しようと、いずれも効率性の議論です。今までの概念にないのがEffectivenessで、アウトカムを改善しようということです。アウトカムというのは、行政があることをやったことによって、社会的にどれ位望ましい成果を生みだしたのかということで、アウトカムという言葉を使っています。いろんな自治体で、アウトカムをどんなふうに捕まえたらよいのか、本当に苦労されていると思います。言葉で言うのは簡単なんですが、皆さん自分の仕事を思い浮かべてみて、投入というのは直ぐ分かる、アウトプットというのも何とか分かる、しかし、それをやったことによって社会的にどれだけ効果が出たのかということについて、いっぺん考えていただけると、NPMの話を聞いていただいた大きな効果がそれだけで出るんじゃないかと思います。やったらそれだけでいいというのではなく、それが社会的にどんなインパクトをもたらしたかということまで測らないと意味がないということです。
  もう一つは、私の解釈で、ほかの方と違うかもしれませんが、VFMを見るというのは、例えば行政で1億円を使った価値を、価値は最終的にはアウトカムで測るんですけど、一番大きくするような使い方をしろということが一般によく言われているんですが、私の考えでは、これを突き詰めていけば、自治体が1億円を使うのがいいかどうかという問題が最終的には来るだろうと思います。自治体が民間で使われているよりも、有意義な使い方ができないのであれば、それは止めといた方が良いということで、全体の経済のなかで、どれ位を民間が使って、どれ位を公的部門が取るかという分配にも、結局VFMというのは効いてくるだろうと考えています。普通、行政の方はいただいお金を有効に使わなければならないと考える。これは正しいのですけれど、しかし、遡って、そのお金をいただけるかということも、使い方次第によっては、そのお金を有効に使えないのであれば税金で取らない方が良いと、最終的にはそういう結論になるのではないかと、私は考えています。

2.NPMが必要とされる背景
 これはどこにでも出てくる数字ですが、平成12年度末で国・地方合計645兆円程度の長期債務残高が発生するのではないかということが言われています。それから、経済規模を表すGDPと比べますと、129.3%程度になるんじゃないかとも言われています。1990年位は、日本は他の国と比べて多少は高かったにしても、ものすごく違うという水準ではなかったわけですけれど、それが、わずか10年ばかりで他の国を牛蒡抜きして、諸外国がいろんな形で努力して、グラフが右上がりにならないように抑え込んでいるのに、日本はそういう抑え込みの努力はほとんど無しで、右上がりになって、しかも100%を突破するという現状になっているわけです。ただ、この100%を突破したのが本当に悪いのかどうか、基準があるのかと言われると、実ははっきりした基準はありません。ただ言えることは、他の国は伸びていてもどこかで抑え込んで、ある程度努力してその結果が実っているという国が多いのに、日本が突出して急激に伸びているということです。対GDP比が100%を超えてレベル自体が高いというのが一つの問題であるとともに、レベルとスピードの2側面に分けて考えますと、増え方があまりにも急激すぎると、このどちらも問題だというふうに考えています。

第2章 NPMの手法
 今申しましたように、ニュー・パブリック・マネジメントというのは公的部門をリストラしようという考え方だということは先程申し上げたとおりです。そしたらどんな手方があるのかということを簡単に見ていきたいと思います。

1.広義の民営化
 先ずは民営化というのが、イギリス流NPMの基本的な考え方だと、私は思っています。広義の民営化と言葉を緩めているんですが、今まで国或いは自治体がやってきたことを民営化する、これが一番基本的な考え方だろうと思います。広義の民営化の具体的な話は、第3章でしますが、今まで行政が直接やってきたことを直接にはやらないというやり方に転換する、というところが大きなポイントだろうと思っています。

2.企業会計(発生主義会計)の導入
 自治省がこんなにやったらどうでしょうと指針を出しましたので、一時に比べますと広く行われているようになってきていると思います。昨日か一昨日、東京都が連結決算を出したという形で、まだ発生主義会計でやるにしても、いろいろ細かい点については、どこまでやるかということについて詰めなくてはならないものが残っていると思います。特に、発生主義会計でやってみたけど、そこで止まっているというケースが結構多いんじゃないかと、私は現状を見て思っています。発生主義会計でやってみたら、歳入に見合う資産がちゃんとある、そしたら何が悪いんでしょうかと、こういうふうになってしまうわけなんです。発生主義会計というのは、やっている方がもともと会計学者の方が多いわけなんですが、どうも我々財政をやっている人間と違うなと思うところは、例えば100億円でビルを建てるとします。すると、会計学者は何の疑いもなく、資産側に100億円計上するんですけれど、それだったら、これから皆さんが一生懸命やろうとする事務事業評価とかコスト・ベネフィットというのはほとんど活きないのではないかと思いますし、個人的な考えですが、今の行政の最大の問題は、それをやったときに皆が100億円の価値があるなと思ってくれないところに問題があるんではないかと、私は思っています。私は会計学者の方といろいろ議論したんですが、会計学の方はそれは当然だとおっしゃる。私はあまり納得できないなと思っています。発生主義会計を具体的にどう導入していくかということについては問題が残っているし、特にこれをどう使うか、もし私が思っているような発生主義会計ができたとして、これが上手く予算の査定と何らかの形でリンクできるのどうか。まだまだ、入り口にさしかかったとこというのが、私の理解です。ただ、全国的にいろんなとこで、やらなきゃならんという方向になってきたというのは、大変いいことだろうと思っています。

3.経済的効果の把握(費用便益分析等)
 この言葉は皆さんも聞かれたことがあると思いますが、費用便益とは、何か事業をやるときにそれにかかったお金とそれをやったことによって発生する便益を求めまして、それがかけたお金の何倍位の効果・便益があるのかによって、それをやるべきかどうかの順序付けをしようという考え方です。場合によっては、便益をコストで割りますので、B by Cという言い方をされたり、コスト・ベネフィット分析という言い方をされたりりします。これは行政が何かモノを建てたり、あるサービスをするとき、本当にそれだけの効果のあることができているのかを検証するための良い方法であると思いますが、難しいのは、benefitをどんなふうに捕まえるかということだろうと思います。行政がやることで、benefitが完璧につかめて、しかも、金銭的に表せるというのは、どうしてもbenefitを限定しないとできないことですし、限定してしまうと、いろんなものを比べにくい。直感的にいいますと、例えばですけれど、学校を造るのと道路を造るのを、本当はB by Cで比べるのが理想なんですが、もともと、便益の部分の内容が違うわけなんですから、何か公共事業をやったとき、benefitをきちっとつかまえられたら、順番に並べられますけど、おそらく現状は、道路なら道路だけのB by Cを作ってやるのが良いと、そこまでは、同じカテゴリーですからやれそうな気がします。しかし、学校と道路ということになってくると、benefitに何を決めるのかということで、ずいぶん違ってきますので、なかなか難しいわけです。それから、御存知のように、中央省庁でこのbenefitをこんなふうにやりましょうということを検討しておりまして、こんなふうにやったら良いですよという案が出ているのですが、私は個人的には、問題が多いんじゃないかと思っています。ですから、費用便益分析というのは、我々経済学者が見るところでは、少なくとも理屈の上ではものすごく有効なんですが、理屈で有効なように、どのように運営していけるかということについて、まだまだ問題点が多いと思っています。特に、これと比較すべきカット・レートをどう設定するかということだと思います。私は、中央省庁でこの案作りに携わっておられた方と一回かなり議論したことがあるんですけれど、結局どんな風にbenefitを定義してみても、カット・レートを低く設定してしまうと、ほとんど問題にならない。つまり、障害物競走をするときに、地面と同じ高さに障害物を置いて、さあ競争だとしても、これは障害物競走になっていないわけで、ある程度の高さが必要なんですけれど、その高さを実は、中央の方ではあまり高くしないでおこうと、そんなことをするとやれないことがいっぱい出てくるからということが先にきまして、それでは、実は費用便益分析をした意味が無いんです。ですから、これで切り捨てますよというカット・レートは当然ながら、私の頭の中では、理想でいいますと、各自治体の財政状況の悪いところは当然、カット・レートは上がるというようなリンクがなければ、国が、全国一律にやりなさいと言っても話にならんというのが、私の個人的感想です。

4.事務事業評価システム
 事務事業評価システムは各地でいくつかのところがやっていると思いますし、先ほど言いましたようなアウトカム−ある事業をやったことによって、アウトカムがどれ位発生するのか、或いは、その事業自体が公共性の観点からしてやるべきかどうかということをきちっと評価するシステムを作ろうというわけで、これはおそらくどこの自治体でもやらなくてはならないことだと思います。日本でおそらく先駆けになりましたのは三重県のケースだろうと思いますが、県、市、町村と違うと思いますが、三重県では3200事業について個別に評価調書を付けて、市民が見れるようなところに置いてあるという状態になっていたと思います。私も学生を引き連れて見学に行きました。今、どこともこれに取り組んでおられると思いますが、確かにそれぞれの事業を根底から見直して、それを市町村がやらなければならない、或いは、やってきたことを、少しでも事務が改善されるように評価するということは大変重要なポイント、公が何をなすべきかの観点から大変重要なポイントだろうと、私は思います。これからもこれは是非やり続けなければならないことだろうと思います。後で、日本の現状はどう位がやっておられるかということを統計を取ってきましたので、お話ししますけれど、かなりのところが取り組んでおられるということは間違いないと思います。ただ、一点だけ付け加えておきたいのですが、別に三重県の悪口を言うわけではありませんが、その評価調書を見に行ったのですが、3000件ありますと、十何冊のファイルが本棚に並べてあります。学生に一人一冊ずつ見せましたが、学生が見ても分からない。つまり、行政の内部の人が見たら多分ああそうかと思われるんだろうと思いますが、一般市民が、あんまり予備知識のない人が見ても、分からない。これは情報公開のやり方としてはまずいと思います。つまり、内部で流通しているのをそのまま公開するというのは大事なことではあるんですが、私から見ますと、公開するとき何かコメントをつけるとか、或いはもう少し見やすくしないと、もともと公開するというのは市民に知ってもらって判断を仰ぐという趣旨があるのに、行政の人でないと分からないことを公開して何になるのだろうと思いました。

5.「契約」とマネジメント手法の導入
 ミノーグの定義のところで申しましたように、結局のところ、契約という概念を重視しまして、行政内部で契約を結ぶ−これは日本ではなかなか難しいだろうと思いますが、例えば、私がドイツに行って調査しましたときは、助役さんがものすごく強い権限を持っていまして、それぞれの仕事を分担している局長さんと契約を結ぶ。この業務を年間予算これ位でやれというような契約を結ぶ。そうしますと、局長さんは今度は、自分の部下になれそうな部長さんや課長さんを見つけてきて、局長は部長や課長と契約を結ぶ。そして、課長はまた、具体的に働いてくれそうな人を見つけてきて契約する。各段階は全部契約なんですね。ですから、何をどうやるというのははっきりしている。例えば、2年間経ってできなければクビとはっきりしています。しかし、これを日本でどうやるかというと、なかなか難しくて、某市でボーナスに能率的な要素をちょっと加味しようとしたら、大騒ぎになったと、結果的になかなか難しかった。これは日本的現実だろうと思います。契約の考え方をどう持ち込むかというと、やっぱり仕事の配分に応じた給与を多少ともリンクするようにしないと、これはできないのではないかと思います。或いは、それができないのであれば、少なくとも行政の外部に、競争者を持ってきて、これと競争させるというのが一つの考え方だろうと思います。また、こんなことは多分、日本では絶対できないだろうと思うのですが、イギリスで行われましたCCT(日本語では強制競争入札)という手法があるんですが、これは、国が法律を作りまして、地方自治体がゴミとかの事業をやるときには必ず入札をさせ、外部に競争者となるような者を持ってきて、内部と競争させる。それに負けると、その部局をつぶすか廃止するという国の法律を作りました。これはあまりにも厳しいというので見直されていますけれど、これ位やったというのが、イギリスのNPMの実際だと、私は思っています。競争的というのは、NPMを考えるとき、大きなキーワードです。日本でこんなことなかなか難しいと思いますし、よそと競争して勝ち残らないと、公的部門の中でも残れないというシステムが−そこまでいかなくても、そういう精神の下でどんなシステムを作るかということが、今後問われることだろうと思います。

第3章 広義の民営化手法
1.狭義の民営化
 狭義の民営化として、ここでは4点ほど挙げますけど、今日の民営化というのは、国ないし自治体がやったことを民営化してしまうということで、例えば、イギリスのケースで、航空会社のBAの例もありますし、あるいは、もっとラジカルにやったのは、ニュージーランドのケースだろうと思います。中央省庁を減らしたり、かなりのことを大胆にやりましたので、これは一番民営化の正統的な方法だろうと考えています。日本ではなかなか難しいのかなと思っていますが、青森県がバス事業を民営化するということが報道されていました。それから今後、幼稚園とか保育所とかその辺のところが民営化或いはエージェンシー化のようなやり方が取られる可能性があるのかなというふうに思っています。ですからこのやり方が、日本で全く無理だということでは必ずしも無いと、私は思っているんですけれど、やれるところがひょっとしたら限られているかもしれないと思っています。

2.PFI
 PFIは新聞等で報じられ、現実に進行しておりまして、頭文字を取っていますから、private financial initiativeということで、民間資金を活用した事業と訳せると思いますが、大阪でもいくつかのケースがあります。府がやりました駐車場、それから、泉大津のケースでしょうか。ということは、もう現実に動き出しています。PFIはいろんなやり方があるだろうと思いますが、例えば、ある建物を民間が建てて、それを公共が使わしてもらうというやり方が、おそらく本来的には一番考えやすいところかなと思います。日本では建物は建てるけど、なかの運営をPFI方式でやろうというのが、現在、大阪なんかでやられているやり方です。勿論、どの部分で民間資金を活用するかというのは、今後知恵の使いどころでありまして、私はやっぱり、古い言葉ですけれど、公設民営−公が建物を造り、運営は民間がやるというのは、一つの良い方法かなという気はしています。と言いますのは、民間が施設まで作って、全部その資本金まで含めてペイするようにやるのは、なかなか難しかろうと思いますし、その部分を公共が持つというPFIというのは、確かにこれからは考えられることだと思っています。ただ、ものすごく大胆な言い方をしますと、PFIで本当に効果があるのかどうかというのは、なかなか判断が難しいところだろうと思います。と言いますのは、例えば、ある建物を建てるのをPFIでやるとしましても−もっと具体的な例の方がわかりやすいかもしれませんが、役所が、庁舎をPFIで建てるとします、一時的にどっと出ていくお金は減るわけですけれど、毎年その賃貸料を払うわけですから、例えば30年単位で見て、どれだけ効果があるのか、ということは当然考えておかなくてはならないことだろうと思いますし、よく考えておかないと、PFIでやって良かったかどうかということは、おそらく後々問題が生じる可能性があるかと思います。今言われていますのは、PFIでやる以上、民間が入るから、民間はきちっと評価して、ペイしないようなものは作らないだろうということで、PFIはいいと言われていますけど、これも公的部門が最終的にリスクをどれくらい持つかということによって、当然異なるわけです。もしうまくいかなかったときに、公的部門が最後の部分を多少ともみなければならないとなれば、これは三セクがやった失敗をもう一回やるということは可能性としてはあるだろうと思っています。決してネガティブに言っているわけではなく、問題点があるということを言っているわけです。それからもう一つ、PFIがいいと言われているのは、公がやるよりおそらく、例えば何か建物を建てるんであれば、建設費が安上がりになるんじゃなかろうか、効率的な建築をやるんじゃなかろうかということも言われておりまして、そのあたりのメリットをうまく使えるようなやり方をしないと、PFIをやっても一時に出ていく金を分割払いしただけということであれば、何のためにやったのか分からない。そのへんの評価をきちっとする必要があるだろうということと、それから、PFIをやるときの問題点は、私が思いますに、例えば、公的部門が直接やったときには補助金が使えるし、交付税もつぎ込める、民間がやるとなれば、それはできないということになれば、PFIはなかなか難しかろうということなんです。民間資金を活用したときに、交付税措置をどうするか、地方債をどう活かせるかということにつきまして、制度が前向きに変わっていますから、もし皆さんが具体的に、PFIを利用すると言うことになれば、最終的にはこの制度をどんなふうにうまく活用できるかいうところまで研究していただかなければならないと考えております。

3.民間委託
 これもこれまで既に、地方自治体もいろんなことを民間委託してこられたと思いますが、まだまだ、これから民間委託する部分、することが可能な部分があるだろうと考えています。実際、経営学会でしたか、年に1回くらい、民間委託したときと直接行政がやったときのコストの比較をしていまして、ゴミ処理だと民間委託したら半分位になるというような話も出ています。これも勿論、反論があって、どこで比べているかによって違うとか反論はありますが、やはり、民間委託すると、私が見ている限りコスト・セービングには間違いなくなるだろうと思いますので、可能なところは民間委託していくというのは広い意味でみたら、民営化手法と思います。

4.バウチャー制度
 耳慣れない言葉ですが、例えば、自治体が資金を何らかの形で提供して、サービスを受ける人はその資金の下で、サービスを選べるということです。介護保険なんかかなりそれに近いと思いますし、元々このバウチャー制度といわれたのは、アメリカで教育に関して、バウチャー制度というのが言われました。これは何かと言えば、例えば、大学に行くような子供を持っている父兄に、年間100万円の価値のあるクーポンをあげる、このクーポンは国立大学に行っても、私立大学に行っても使えるというようにしておきますと、もし国立にいくとなると、それだけで足りる、もし私学に行くともう少し足さないといけないということですけれど、受け取った人が、自分がいいというようなものを選べる。公共がやってるのがいいと思えば公共を選べるし、民間がやってるのがいいと思えば民間を選べる、そういうような一種のクーポン制度です。これでやるというのは、一種の競争条件を常に確保して、消費者の目から見て、どちらがいいかを選択させようとする考え方で、広い意味で見ると、公的部門だけがあるサービスを提供しているよりは、余程良くなるだろうという意味で、ここでは、広義の民営化手法というところに含めています。

第4章 日本での改革の進展
1.近年の「行革」等の動向
  NPM的手法或いは事務事業評価システムとかいろんなことを言われていますが、日本で過去2年間の間にどれ位そういうことがやられているか統計をとりました。合計を100として、新聞に何回取り上げられたかをパーセンテージで表します。私は一応ここで、1番目に行革手法、これまで使われてきていたような行革的な手法。2番目は中間的手法、3番目がNPM、4番目が議会と、こういうような分類をしてみました。これも参考までにという表なんですが、先ず、行革的手法というのは何があるかというと、定員管理の適正化、人材育成、給与の適正化、公共工事のコスト削減、財政健全化、こういうものを一応行革手法に入れてみました。この分け方でもなかなか難しい問題が出てきましたけど、私なりの分類で入れてみました。
  行革手法は、いろんなところで行革的手法でやっております。全体を100としたときの構成比で見ますと、この中で多かったのは、給与の適正化、財政健全化、人材育成こういう順番になろうかと思います。やはり、一番目に見えて効果があって、しかも、本気でやればやれるのが給与の適正化だろうと思いますので、それで一番ウェイトが高いというのも事実だろうと思います。また、昔から行革をやるときにやられている手でですね(NPM的手法とは違うのかと思っているのですけれど)、そういうことがよくやられています。ちなみに新聞等でよく報じられているものに、都道府県でも、給与の適正化というのは8.1%あります。件数が28件ありますから、全く重複がないわけではないので、都道府県レベルではかなりのところで給与の押さえ込みをやっていると思います。
  大阪府下では、どんなことで新聞で取り上げられたかですが、人材育成では枚方、給与の適正化では大阪、豊中、財政健全化では豊中、池田、こういうところが報ぜられています。また、報じられてなくても、やっているところというのはいっぱいありますから、ここに載っている数字がやっている割合ではなく、報ぜられた割合ということで理解いただきたいと思います。このことに関して、私が個人的に思っていることは日本の行政はPRがものすごく下手で、自分のところで折角やった良いことでも、別に新聞に取り上げられなくても気にしない。古き良き謙譲の美徳といいますか、そういうところが多いのですけれど、やっぱりこれは、何かやったら社会に対して説明するとか、アカウンタビリティということをよく言われますけれど、アカウンタビリティ+PRですね、これを是非やらないというと、これから厳しいのではないかと思います。ここに書いてある数字は、何かやって、なおかつPRしたところと読んでいただくと、多少NPM的かなというふうに思います。
  NPM的手法と言うところに移りたいと思います。ここでは、事務事業の見直し、事務事業評価手法の導入、外郭団体の見直し、民間委託、規制緩和・権限委譲ということで載せていますけれど、この中には、もう既にやっているというところと、これからやろうというところと、両方が新聞に報じられています。この中で一番パーセンテージが高いのは事務事業評価手法の導入をしたところ或いはしつつあるところで4.5%です。その次には、民間委託で3.7%あります。堺と泉大津は例のPFIが報じられたということがありますが、この表を見る限り、NPM的なことをこれからやろうというところがあるということでして、これで成果を上げたというところは本当に数少ないということがお分かりいただけるのではないかと思います。私達が注目していますのは、事務事業評価手法の導入が29件と多いのですが、そこが評価手法を導入して今後どういうようなことをできるかということは今後の課題であってですね、皆さんそのために行革室の方であるとかですね、努力されているわけですが、今後の問題なのかなというのが、私の数字から見た整理になります。
  それから、一つ戻りまして中間的手法ですが、これも適当に私が分類しただけなんですが、古典的な行革でもないのかと思いつつ、NPMでもないのかなと思うのがここに入っています。大綱・実施計画をする、組織・機構の見直しをする、情報公開、住民サービス、その他などですが、この中ではおそらく、情報公開と住民サービスはNPMに近いのかなと思います。その他はいろんなものが入っていると思います。今日は持ってきていませんが、一番多いのは大綱・実施計画でありまして、これがどの程度NPM的で意義を持つのかというのは個別に見てみないと分からないのですが、比較的多くのところでやっておられるということです。
  最後に4番目の議会に入りますが、この整理をしていて意外であったのは、65件と議会が予想したより多かった。おそらく市や町村で行革で頑張っておられる方々が、なかなか議会には手を着けられんわと思っておられる方が多いと思うのですが、私もそう思っていたのですが、意外と件数が多くて、私の覚えている範囲内で申しますと、議会を夜開いたナイター議会、土・日にやっているところ、議員の海外出張の時、今まで全額旅費を出していたのを半額補助に代えたり、議会の議員が各種審議会の委員を兼任されているのを廃止したとか、意外と議会の件数が多かった。行革、NPM的手法を考えていきますと、最後は議会がちゃんとした意志決定をして、しかも議論を住民にオープンにするかということを考えると、ナイター議会とか土・日に議会を開くことはそれなりに影響力があると思います。言い忘れましたが、議会のなかには議会の状態をCATVとかテレビで公開するとかいうのも入っておりまして、議会で何が話し合われているかということを住民にオープンにするということは、それなりの効果があると思います。この辺が今回整理していて面白かったことです。
  ちなみに、都道府県のケースでは、議会は8件ありまして、市町村では多かったのですが、都道府県でも改革の方向というのは多少出ています。
  この統計を見て、いろんなところで努力をされているというのが分かったわけなんですけど、あくまでも報道された範囲内でということですが、今から申し上げますのは、余談と偏見に基づく発言かもしれませんので、割り切っていただきたいのですが、この表は1,000件ほどのデータを集めて、面白かったのは、行革的手法を取っているところは意外と地方区の小さな町や村に多かった気がしますし、NPM的手法は意外と都市部の先進的といわれている地域に割合が高かった気がします。もう一つ、議会改革については、熱心なところは小さな町や村が多くて、都市の規模とか改革の熱心さというのは比較的きれいに分かれていた気がします。

2.将来像
  先程申し上げましたように、NPM的手法でどれ位の効果が上がるのか、よく分からない段階ですから、今後どれくらい熱意を持ってやられるかによって、効果が分からないところだと思います。それに対しまして、行革手法というのは、比較的効果がわかりやすい。例えば、某府県のケースでは昇給2年停止というのは、すぐに計算できるのできるのですが、NPM的手法というのは事務事業を先ず見直して、どれを廃止するか或いはグレードダウンするかをやるのですから、まだまだ今後何年間かしないと効果が分からないけれど、行革手法の問題というのは、これまで過去に何回も一律シーリングとかやって、結局その必要のあるものも無いものも皆同じように抑え込むという大失敗を繰り返すということを考えると、NPM的手法で要らないものは整理して、そうでないものは伸ばすということで、都市部の市町村は対応していかざるを得ないのかと、私は考えています。

第5章 地方における財政責任確立の必要性
1.地方財源確保の必要性
 冒頭にも申し上げましたように、NPM的手法、例えばPFIを入れる、事務事業評価システムを入れるということは、私は大変大事なんだと思いますが、NPM的手法というのはPFIだけ入れて、それで良いかといえば、私が思いますに、それはまずいのでして、ある種ワンセット−どこからどこまでがワンセットか難しいのですけれど−が要ると思います。例えば、PFIなら企業会計(発生主義会計)はワンセットにすべきとかですね、どれか一つだけつまみ食いというのは難しい。PFIを入れて、どれくらいメリットがあるかというのは企業会計で評価するとかが必要ですから、そういうことをしなくてはなりません。是非皆さんが何かやられる時は、PFIを勉強してどれが有利かいうことも大変大事なんですけれど、全体像のなかでPFIがどのような意味を持っているかということを是非チェックしていただく必要があると思っています。財政責任という言葉で書いていますが、地方自治体が自分のところでどういうことをやるのか、そのために資金調達をどうやるのか、そのバランスをチェックしておかないと、最初言いましたように、3セクの失敗を繰り返すということにならないかということを心配しています。

2.税 and/or 料金
 第1章と関連して、今まで地方自治体がやる時、その財源はかなりの部分税金でやってきた、勿論水道とか公営企業会計については料金収入で取ってきたわけですけれど、民営化手法、例えばエージェンシー化とか、形の上でそんなにきれいにエージェンシーにしなくとも、エージェンシー的やり方をして独立採算の幅を広げるというようなことをすると、結局今まで税金を取ってきて賄ってきたことを、これから料金の形で取る部分がどうしても増えざるを得ないと考えております。そうしますと料金を取ると簡単だ、税金を集めるより簡単だと思われるかもしれませんが、某市の水道料金は他の市より高い、何故だということが当然問題になってきます。これだけインターネットが発達してきますと、大阪府下の市の水道料金一覧表がずらっと出てきて、この市とこの市ではこれだけ違うということを勝手に載せる人が出てきて不思議ではありません。外から厳しい評価或いは監視の目があり得るということを考えますと、料金化ということはそんなに簡単な道ではない。つまり、ちゃんと事業努力をしているのかどうかとか、場合によっては自分のところの品質がよいから、他市より高くつくということが説明できれば、それはそれで良いのですが、品質が同じであるにも関わらず高いということになってくると、大きな問題になってくるだろうと思います。

3.財政責任確立に向けて 
  今後、税の比重より料金の比重の方が上がると思うんですけれど、そのためには、企業努力、営業努力、或いは情報公開をしないと、簡単に税金の代わりに料金を取れるということは決して無かろうと思います。ここのところで言いたかったことは、今後は料金を含めて、地方自治体は財政的に考える必要があるだろうと思います。今までほとんどのところ、皆さんは税金で考えておられたと思いますが、企業会計的な部分が増えてくると、NPM的方法で増えてくると、料金の部分がかなり増えてくるだろうと考えています。

第6章 むすび
1.NPMで財政再建できるか
 これに対しては、私はYesだと思います。NPM的手法を徹底してやれば、財政再建はできると思います。ニュージーランドの例を挙げるのですが、徹底的な民営化をやりまして、15年位前は世界で最も規制の多い国と言われていましたが、今OECD諸国で規制が一番少なくなっていますし、なおかつ財政黒字を出しています。毎年の経常赤字が日本の場合、10%位まで上がっています。ニュージーランドが大胆な改革に乗り出す前は、政府部門の赤字が対GDP比7%〜8%でしたが、15年位して財政黒字を達成しました。ですから、おそらくこれくらい徹底的にやれば可能だろうと思います。ただ、日本でそこまで徹底的にやれるかというのは別ですけれど、可能性としてはあり得ると思います。

2.NPMで「国」を立て直せるか
  これは随分難問なんですけれど、Yesでもあり、Noでもあるかなと思います。NPMをやると上手く行くかというと、比較的分かれている気がします。財政は再建できたけれど、国はそんなに順調でないというケースは当然あり得るだろうと思います。そうは言ってみても、日本は不況だからといって、ものすごい赤字を出して何とかやっている。考えによっては、元々無理なことをしているんだと、それが通常の状態でないと考えれば、本来経済状態がもっと悪くて当然だということは言えるのだろうと思います。その無理をしている状態とNPMの改革を比べるとどうだとというのが、今後の私の研究課題ですが、今のところ、諸外国に比べて、極度に財政状態の悪い日本の国それに地方を考えますと、当面NPMで財政再建に向けて、行財政改革をやらざるを得ないし、結局民間の力或いは市場の力を利用して改革する以外にないんじゃないだろうかと思っています。

(この講演記録に係わる著作権問題は全て、本サイト管理者の責任となります。)

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